135.皆丸い心で

明治十六、七年頃の話し。久保小三郎が子供の楢治郎の眼病を助けていただいて、お礼参りに妻子を連れておぢばへ帰らせて頂いたときのことである。教祖は赤衣を召してお居間に端座しておられた。取り次ぎに導かれて御前へ出た小三郎は、恐れ多さに頭も上げられないほど恐縮していたしかし楢治郎は当時七八さいのこととて気兼ねもなくあたりを見回していると教祖の傍らに置いてあったブドウが目に付いた。それでそのブドウをじっと見つめていると、教祖は静かにその一房をお手になされて、「よう帰ってきなはたなあ。これをあげましょう。世界はこのブドウのようになあ皆丸い心でつながり合うてゆくのやで。この道は、先長く楽しんで通る道や程に」と仰せになって、それを楢治郎に下された。

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