明治二十四年五月十五日午後十一時二十五分
刻限
さあ/\やれ/\、さあ/\何が言い掛けるやら分からん。さあ/\えらい道が出掛けた。さあ/\一寸なら何も知らん。知らん者が何にも知らん。さあ/\何を始めるとも分からん。さあ/\これまで通り来たる道、どうなりこうなり世界の端くれ。あちらの木がゆら/\こちらの木がゆら/\、何にも分からん知らせん者が出入りして居た。一寸の事情一寸のとばしりが出掛けた。この者あの者一寸とばしり。何処までもうろ/\、あちらへうろ/\して居る。どんな事が始めるやら、こんな事、愚な事、どんな事が始めるやら、こんな事愚な者。ほんの障り、どんな風吹くやら、こんな風吹くやら、神なら神だけ、とばしりだけの事。さあ/\道を始め掛けたら、追々道が始まる。いつも春は春、春のように思うて居てはころりと違う。いつでも花の咲くように思うて居るから分からせん。何処からどんな風吹くやら、どんな風あたるやら、さあ/\どんな風吹くやら雨が降るやら知りゃせん。何の楽しみもありゃせん。一寸とばしりも掛かる。これが分からん。花の咲く旬、何ぼどうしたて、旬が来にゃ咲きはせん。風が吹く、雨と天気と待つけれど、大風だけはどんな者でも風は待たん。危なき道があるからちゃんと聞かしてある。どんな事見るやら聞くやら案じてばかり居る。又一つの話して聞かす。何を言うても、皆、道道々の話、それ/\どうもとばしりだけでも驚く。何時どんな事見るやら、聞くやら分からせん。内々だけの心得だけの事情あるやろう。どんだけ心持ったとて、何処に聞かすのやない言うのやない。これを留めて持って置かにゃならん。ちゃんと聞いて置け。