97煙草畑

ある時、教祖は、和泉国の村上幸三郎に、「幻を見せてやろう。」と、仰せになり、お召しになっている赤衣の袖の内側が、見えるようになされた。幸三郎が、仰せ通り、袖の内側をのぞくと、そこには、我が家の煙草畑に、煙草の葉が、緑の色も濃く生き生きと茂っている姿が見えた。それで幸三郎は、お屋敷から自分の村へもどると、早速煙草畑へ行ってみた。すると、煙草の葉は、教祖の袖の内側で見たのと全く同じように、生き生きと茂っていた。それを見て、幸三郎は、安堵の思いと感謝の喜びに、思わずもひれ伏した。というのは、おたすけに専念する余り、田畑の仕事は、作男にまかせきりだった。まかされた作男は、精一杯煙草作りに励み、その、よく茂った様子を一度見てほしい、と言っていたが、おたすけに精進する余り、一度も見に行く暇とてはなかった。が、気にかからない筈はなく、いつも心の片隅に、煙草畑が気がかりになっていた。そういう中からおぢばへ帰らせて頂いた時のことだったのである。幸三郎は、親神様の自由自在の御働きと、子供をおいたわり下さる親心に、今更のように深く感激した。

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