56.ゆうべは御苦労やった
本部神殿で、当番を勤めながら井筒貞彦が、板倉槌三郎に尋ねた。「先生は、何遍も警察などに御苦労なされて、その中、ようまあ、信仰をお続けになりましたね。」と、言うと、板倉槌三郎は、「わしは、お屋敷へ三遍目に帰って来た時、三人の巡査が来よって、丹波市分署の豚箱へ入れられた。あの時、他の人と一晩中、お道を離れようか、と相談したが、しかし、もう一回教祖にお会いしてからにしようと思って、お屋敷へもどって来た。すると、教祖が、『ゆうべは、御苦労やったなあ。』と、しみじみと、且つニコヤカに仰せ下された。わしは、その御一言で、これからはもう、かえって、何遍でも苦労しよう、という気になってしもうた。」と、答えた。これは、神殿が、未だ北礼拝場だけだった昭和六、七年頃、井筒が、板倉槌三郎から聞いた話である。註板倉槌三郎は、明治九年に信仰始。よって、教祖のお言葉をお聞かせ頂いたのは、明治九年、又は十年頃と推定される。