52.琴を習いや

明治十年のこと。教祖が、当時八才の辻とめぎくに、「琴を習いや。」と、仰せになったが、父の忠作は、「我々の家は百姓であるし、そんな、琴なんか習わせても。」と言って、そのままにして、日を過ごしていた。すると、忠作の右腕に、大きな腫物が出来た。それで、この身上から、「娘に琴の稽古をさせねばならぬ。」と気付き、決心して、郡山の町へ琴を買いに行った。そうして、琴屋で、話しているうちに、その腫物が潰れて、痛みもすっきり治まった。それで、「いよいよこれは、神様の思わくやったのや。」と、心も勇んで、大きな琴を、今先まで痛んでいた手で肩にかついで、帰路についた、という。

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