立教185年の秋季大祭には、「諭達第四号」のご発布を待ちわび、国内外問わず多くの人々がおぢばへ帰参した。
その中に、ブラジルから帰ってきた一人の青年がいる。ブラジル青年会委員長の木村エルトン正教さんだ。
どんな思いでおぢばへ帰ってくるのか、そして、ブラジルではどんなことを意識して信仰しているのか。
「YOUは何しにおぢばへ」第2回は、彼の信仰生活に迫った。
おぢばが恋しい
日本から約17,360km。時差は12時間。日本の真裏に位置するブラジルからの帰参は容易くはない。
日本から遠く離れたブラジルで信仰していると、やっぱりおぢばが恋しくなりますね。できることなら毎月おぢばへ帰りたい。おぢばにはエネルギーがあるので、自分の信仰に力をもらえるように感じています。
“信仰のエネルギー”をもらいに
以前、こんな話を聞きました。
鹿児島県桜島では「桜島大根」という丸くて大きな大根が作られています。
その種を、桜島とは別の場所に植えると、桜島で作ったときと同じように丸くて大きな大根ができます。しかし、その大根から取れた種を同じ場所に植えると、翌年には少し細長くなり、3年目には普通の大根になってしまいます。ところが普通の大きさになった大根の種をもう一度桜島で植えると、次の年には丸くて大きな大根に戻ると言うんです。
私たちの信仰も似たようなもので、おぢば帰りをして“信仰のエネルギー”を頂いてブラジルに戻るんです。
でも2~3年経つと教祖の教えから離れた通り方をしてしまうこともあります。そうしたらまたおぢばに帰り、エネルギーをもらって信仰を元に戻してもらうんです。
信者さんには、距離がどれだけ離れていても、親神様・教祖のもとに帰らせてもらって、心にエネルギーを頂こうと伝えています。
元のぢばで親神様・教祖に直接お願いしたい
貴重なおぢば帰りだからこそ、大切にしていることも明かしてくれた。
ブラジルで悩んでいる信者さん方のたすかりを直接おぢばでお願いしたい、教祖に直接ご相談させていただきたい、という気持ちで帰らせてもらっています。もちろん、自教会や伝道庁でもお願いはしますが、やっぱり直接おぢばの理を頂戴したいですね。
わたしの信仰
常に笑顔で勇みあふれる木村さんだが、若い頃は信仰にためらいがあったという。
木村さんは信仰4代目。初代の曽祖父が日本で入信し、間もなくしてブラジルに渡った。文化も違えば、言葉も通じない険しい道中をおさづけを頼りに通られた。
それから代を重ね、私はいわゆる苦労がない信仰といいますか、これまで信仰が当たり前の生活でした。教祖の教えは素晴らしいなと思いつつも、どこか信仰を掴みきれずにいました。
そんな木村さんに転機が訪れる。
ブラジルで開催される「教義講習会」「修養会」という教えを学ぶ場に15歳の頃に参加しました。
修養会を終え教会に帰ると、突然父から
「そろそろ、にをいがけに出てみたらどうだ」
と言われたんです。
正直、自分が信仰を実践できていないにもかかわらず、人に素晴らしいですよと伝えることに、どこか後ろめたさを感じて、なかなかにをいがけに出られずにいました。
そんなある日、祖母に「私はまだまだ教えを実践できていないので、人に伝える権利がない。だからにをいがけに出る度胸がない」と伝えました。
すると祖母は、
「この道の信仰は口だけで伝えるものじゃない。もし、自分の力で信仰を伝えようと思っているのならそれは間違いだよ。毎日、公園へ行ってゴミの一つでも拾わせてもらいなさい。そうしているうちに、だれかが『なんで毎日ゴミ拾いをしているの?』と聞きに来るようになる。その時に私は天理教の人間だよって伝えるんだよ。この道の信仰は行いで伝えるものなんだ」
と背中を押してくれました。
以来、木村さんは毎日ゴミ拾いに行くように。
すると、次第に木村さんの行動を不思議に思う人が現れ、「なぜ毎日ゴミ拾いをしているのですか?」と聞かれるようになった。
私は「天理教の信仰をしていて、これはひのきしんといって・・・」とお話をさせてもらいました。その時は嬉しくてたまりませんでしたね。
その後もひのきしんを続けていると
「あの家の人は病気で苦しんでいるよ」「ここの家に行ってみるといいよ」
と教えてくれる人が現れるようになった。当時、まだおさづけの理を拝戴していなかった木村さんは、自教会のようぼくの方を連れてそのお宅へ行き、おさづけを取り次いでもらった。すると不思議に次々とご守護が現れた。
ご守護を目の当たりにして、心の底からおさづけって素晴らしいなと思うようになりました。そして、いつしかようぼくになることが私の夢になったんです。
そして、2005年におさづけの理を拝戴しました。それからは毎日おたすけに歩くようになり、1日60回くらいはおさづけを取り次ぎました。
そのときくらいから信仰を掴み始めたと思います。
ブラジル青年会委員長としての今後の意気込み
10月27日にブラジル青年会委員長に任命され、委員長としての今後の意気込みを伺った。
自分に務まるのかという不安はあります。でも、教祖の教えをもっと多くの若者に伝えさせてもらう良い機会なので、「ようぼく」として大きなチャンスを頂いたと感じています。
コロナ禍の3年間
ブラジル青年会はこれまで「布教キャラバン隊」「ブラジル青年会総会」「ブラジル青年会ひのきしん隊」の3つの活動を柱にしてきました。これは何十年も続いてきた活動です。
ですが、時代の経過とともに、若い人たちの価値観は変化しています。
これまでの活動に加え、なにか若者に興味を持ってもらえるような活動をしていこうとしていた矢先、新型コロナウイルスのパンデミックが発生しました。
パンデミック以降、思うような活動ができなくなり、布教活動も止められました。
そんな中はじめたのが、支援品を募り、ドライブスルーで配る活動や、「すき焼き」を販売して、その収益を困っている施設や家庭に寄付する活動でした。
今までにない活動でしたが、みんな勇んで取り組みました。
これからの活動
2023年1月には3年ぶりに「布教キャラバン隊」が開催されます。
3年間できなかった外向きのおたすけ活動を少しずつ再開していこうと思っています。
それに加えて、内側にも目を向けたいと考えています。
コロナ禍以降、ブラジル管内では、信者さんが参拝に来られず、ひのきしんの手がなくて困っている教会がたくさんあります。青年会員が率先して、そうした教会と連絡を取り、仕事が休みの日を利用してみんなでひのきしんに行ければと考えています。地域の人はもちろん、信者さんにも喜んでもらえる青年会になれればうれしいです。
良い「にをい」がする人を目指して
以前、おぢばでこんな話を聞かせてもらいました。
「おたすけに出る時、自分から『良いにをい』がしていないと、にをいはかからない。例えば、公園のベンチに座っている人に、突然、『飴どうぞ』と言っても相手は受け取らない。でも、隣に座って、まずは自分が飴をなめて、良い香りがすれば、相手は受け取るかもしれない。信仰も同じで、まず自分が味わって、良いにをいを出さないと話は聞いてもらえないよ」
私はその時の話がスッと心に治まりました。
それからは、普段から良いにをいが出せるように、明るく勇んで通ろうと意識しています。
おわりに
もちろん勇めない日が続くと、信仰を忘れそうになります。そんなときは、おぢばへ帰り、信仰心と英気を養って、また頑張ろうって自分を励ましています。
最後にそう語った彼からは、あふれんばかりの「良いにをい」がしていた。
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