明治二十年三月十九日(陰暦二月二十五日)午前一時二十分
刻限御話

さあ/\しっかり聞かねば分からん/\。分からん事は尋ね/\。尋ねにゃ分からんで。今までの長道中、道の事情によりて、まこと難渋な事もあり、情無いと思う事もあり、その中内々一度二度より、ほんに面白いというような事が無かったで無かったで。さあ/\よう/\よう/\の処道なれど、どうも一つが分からんによって、残念々々と言うて口説き詰め。このまゝでは、悧巧な子供もあり又鈍な子供もあり、このまゝでは楽しみが無い。仕事場と言うてあれども、言うて持ち込んだ。それ故に、やりたいものが沢山々々にありながら一寸かくれた。残念々々と言うのは、渡さにゃならんものが渡さなんだが残念々々。西から東へ、東から西へ、北から南へ、さあ/\尋ねに行かねば分からん事情。これから先の道は言うまでやない。

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