81.さあお上がり

上原佐助は、伯父佐吉夫婦、妹イシと共に、明治十四年五月十四日(陰暦四月十七日)おぢば帰りをして、幸いにも教祖にお目通りさせて頂いた。教祖は、大層お喜び下され、筍と小芋と牛蒡のお煮しめを、御手ずから小皿に盛り分けて下され、更に、月日に雲を描いたお盃に、お神酒を注いで下され、「さあ、お上がり。」と、おすすめ下された。この時、佐助は、三十代の血気盛りであった。教祖は、いろいろとお話し下されて後、スッとお手を差し伸べられ、佐助の両手首をお握りになって、「振りほどくように。」と、仰せられたが、佐助は、全身がしびれるような思いがして、ただ、「恐れ入りました。」と、平伏するばかりであった。妹のイシ(註、後に辻川イシ)が、後年の思い出話に、「その厳かな有様は、とても口には言えません。ハッとして、思わず頭が下がりました。」と、語っている。この時、教祖の温かい親心とお力を、ありありとお見せ頂いて、佐助は、いよいよたすけ一条に進ませて頂こうとの、確固たる信仰を抱くようになった。

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